さあ、入るぞ。
ところがドアを押しても引いても、開かない。
傍らの石彫の頭を撫でても、開かない。
なんだよ、休みかよ。
ここはほんとにブラザー印刷かよ。
焼肉屋みたいな建物だし(とほんとに言ったヤツがいた)。
(それを聞いて、ピスタチオグリーンを朱色に変えて、大きな暖簾をたらしてやろうかとも思った。)
と、左を見るとインターホンがある。
これを押せとも書いてない、標示もない。
不親切だなあ。
「ピンポーン」
「いらっしゃいませ、ブラザー印刷です。」
おっ、ブラザー印刷だ。間違いなかった。
日清紡の社員寮じゃなかった。