2009年03月12日

「なぜ会社は変われないのか」その4・目覚める瞬間

0311自宅.jpgここは、この小説の山場のひとつ、引用で続けよう。
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が、岩城の本当の内的変化は、オフサイトの場でなく自宅に帰ってから起こっていた。
その日、各グループの報告内容を書き留めたメモを持ち帰った岩城は、家に着くとただいまの挨拶もそこそこに居間に直行して、鉄は熱いうちに打てとばかりに整理を始めた。B4サイズのレポート用紙にサインペンの大きな字で、メモから拾った言葉をどんどん書き付けていく。またたくまに、文字で埋まった紙がテーブル一面に広がった。
「何やってるの、お父さん」お茶をもってきた妻の志津子が目を見張り、何事かに一心不乱の夫の側に来て、膝をついて覗き込んだ。(中略)妻の目は涙でいっぱいになっていた。
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と、こう読み進めば「大変ね、お父さん。一緒にがんばろうね」との奥さんの言葉に吹っ切れる岩城工場長。
そんなストーリーかと、そう思うだろう。
そして、現実はそんなに簡単じゃないの感想を持っただろう。
ところが、この小説は違った。出来が良かった。
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「私……お父さんがうちの中でいくら威張ったり頑固なことを言っても、ほんとは家族思いのお父さんだと思ってる。でも、工場長という責任の大きいお仕事をさせてもらってるんだし、会社では大変だろうなって思ってたの。うちの中ではわがままで人の言うことも聞かないけど、会社ではそんな事もなくて、我慢して一生懸命やってるから周りのみなさんも信頼して下ってくださるんだと思ってた。だから、私も我慢のしがいがあったし、一緒に頑張ってるつもりだったのよ。でも、ここに書いてあるのを読んだら……。会社の方たちがこんなふうに思ってるなんて、これがほんとにお父さん?」
唇をかんだ妻の目は、なおも書きなぐった文字を追っていた。
岩城は絶句した。考えてもみなかった。
会社では上下関係もある。それなりの厳しさは必要だし、人間関係にも多少の不愉快はつきまとうものだと割り切っていた。しかし、違う。妻は家と同じように会社でも、夫に人の話を聞く姿勢がないから部下に嫌われている、慕われてなんかいないことを知ってショックを受けている。そして、部下たちと同じように、人の話を聞かないのはおかしいと抗議している。
そういうものだと思っているのは俺だけか?
<俺って、そうなのか>
会社と家庭の二段構えで思い知らされて、今度こそ岩城は合点した。
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こうして、岩城は爽やかな朝を迎えたのだ。

ながながと書いた。
小説は表現が命だから、そのままが伝わり易いと考えた。

それと「この本いいよ」と勧めても、買って与えても、うちの社員本読まないからなあ。
読んで欲しい人に限って。

こんな長いブログも読んでもらえねー。

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この記事へのコメント
社員じゃないけど長いブログは読んでるよ。

大事なのはタイミングの良い駄目押し?
タイミング悪いと破裂だもんね。
しんらいかんけー。
Posted by 長女 at 2009年03月12日 10:15
読むべき人が読んでくれないなあ、の嘆きは無用でしたね。
そんなコミュニケーションって低級。
人に気付けって言ってるようなもの。

読んで気付く準備の整ってる人は、必ず読んでる。

長文を書くべき時に書いている、という事実があるだけ。
このコメントのタイミングもね。
Posted by 伝道回り道 at 2009年03月12日 11:11